目次:  第3話 酸素 / 第2話 一酸化炭素 / 第1話 メタンガス

市民の皆様へ 〜易しいガスのお話〜 第2話 一酸化炭素(CO)



 家庭内、工事現場、山小屋等において一酸化炭素による中毒事故が報じられました。
 当協会は「高圧ガスの安全・保安」に係る技術の専門家集団として、製造・販売・輸送・検査等の現場の安全を維持することによって、市民生活に対する影響を無くすべく努力してまいりました。
 このたびの事故の教訓の一つとして、なるべく専門用語、数値を使用しないように記述して、一般市民の皆様に理解できる「易しいガスのお話」をホームページ上で順次公開することにしましたので、ご利用下さい。

第二話 一酸化炭素(CO)

1. ガスの性質:

 一酸化炭素は純度の高い場合は無色無臭で、都市ガス、エルピーガス、灯油、石炭、練炭等の燃料を燃やしたときに、許容濃度以下の極微量ですが常に発生しているガスです。

 しかし、空気が不足している状態(密閉した室内等で新鮮空気の供給が妨げられている場所)で燃焼すると、いわゆる「不完全燃焼(酸素が不足している燃焼)」となり、一酸化炭素の発生量が労働作業環境の許容濃度(25ppm)を越えて急増し、一酸化炭素ガス中毒の症状を示します。そのまま発生場所に留まると、死に至る危険があります。


2. ガスの在る所:

  @ 都市ガス
 大都市における家庭用ガス(都市ガス)は、現在は中東・東南アジア等で地下より採取した天然ガス(メタンガス)を現地で液化して、液化天然ガスタンカーで運ばれて来たものを、日本の基地で気化させた後に地下埋設管(ガス管)で家庭に供給されています。この場合の「液化天然ガス」中には、一酸化炭素は含まれていません。また、同じく「エルピーガス」にも含まれていません。

 しかし、一部地方の都市ガスには「改質ガス」が使用されており、一酸化炭素を副成分(約4%)として含有する場合があります。
 例えば平成19年1月の北海道北見市で、公道地下の都市ガス埋設配管折損部より一般家庭の居住室内へ都市ガスが漏れ込んだことによる一酸化炭素中毒事故が起こり、死亡した方まで出てしまいました。室内には必ず「ガス検知警報器」を取り付けており、人間が臭いを感じ易いように都市ガス自体に着臭して有りますが、一般的に燃焼器具の設置している部屋(台所等)が中心ですので、自宅敷地外からの地下空孔を通じてトイレ等の居住部分への都市ガスの侵入には効果がありませんでした。

  A 暖房器具等の不完全燃焼
 暖房器具の設備上の欠陥による一酸化炭素中毒が、平成19年には複数メーカーの旧型製品において公表されました。
 現時点でも、古い製品の「回収、交換又は修理」の呼びかけ(新聞等での広報)が続行してなされています。

 一時代前は下記Bの「練炭コンロ」が有り、今でも「室内に直接排気」される方式の「ガス又は石油暖房機」等が有ります。しかしこの種の室内排気式は、逆に使用者自身が燃えている火を見ることができるので、一酸化炭素中毒を防止するための「換気の必要性」を熟知し習慣付けられていました。

 ところが、マイコン制御型燃焼式暖房機、屋外排気式燃焼式暖房器及び屋外排気式湯沸器等の普及による利便さにより、心の隙が生じてあなた任せとなり、機器メーカーも工事業者も使用者も、人間が本来持っている「注意・警戒能力」が薄れてきた結果として、排気筒のはずれ、穴開き、閉塞及び制御機器不良等による一酸化炭素中毒事故が増加していると思われます。
 もちろん、責任の第一は機器メーカー及び工事業者ですが、如何に補償されても中毒被害の身体、精神的苦痛を完全に回復することは出来ないので、使用者自身での「危険予知」が大切と思われます。

  B 練炭等の不完全燃焼
 日本において一時代前には、家庭用暖房器具として練炭七輪(コンロ)が重宝に利用されていましたので、その当時には、不完全燃焼による一酸化炭素中毒が発生していました。
 現在は、キャンプ等の屋外及び専門業者が僅かに使用しているぐらいで、しばらくは中毒事故の報告がありませんでした。

 しかし、本来の燃料又は暖房用途と異なり、最新技術の成果であるインターネット時代における「裏サイト」において、練炭の使用が亡霊のように復活し、敢えて自家用車等の密閉空間で不完全燃焼させて、一酸化炭素を発生させ、結果的に集団自殺の手段として用いる事件が後を絶ちません。

 このことは、少なくとも練炭コンロによる一酸化炭素中毒が無くなったと思っていた、私共のごとき「ガスの安全」を使命としている者にとっては、なんともやりきれない状況です。
  
  C 自家発電機等に使用されるエンジンの排気ガス
 平成20年1月に北九州市において、工業用水の地下工事現場で一酸化炭素による中毒死亡事故が発生しました。大口径の埋設配管内にいた作業員が掘削作業中に倒れたもので、作業地点で一酸化炭素が発生したわけではなく、地上に設置していた工事用機器に電力を供給するガソリンエンジン発電機の「一酸化炭素を含む排気ガス」が埋設配管内に漏れ込んだためと推定されています。
 現在、北九州市において作業地点の強制換気の方法に問題が無かったか及びガソリンエンジン発電機の使用に問題が無かったかを調査中です。

 なお、同じく自動車のエンジンの排気ガスにも一酸化炭素が含まれているので、車庫等の密閉空間で長時間アイドリング等を行うことは危険です。
  
  D 炭鉱
 日本においては一世代前になりますが、石炭を掘る「炭鉱」の坑道内において一酸化炭素ガス(石炭粉塵、メタンガスの不完全燃焼により発生する)による中毒事故が多発し、大惨事になったことも有りました。

 事故を防ぐために坑道内の各所に「ガス検知警報器」を設置して現場での監視と管制室において集中管理し、かつ強力に「強制排気」していても、密閉された坑道で爆発等により大量発生した時には、現在も中国、ソ連等において中毒事故が発生しています。
  
  E ボンベ充てんガス
 工業用一酸化炭素ガスとして高圧ボンベに充てんされたものが製造されていますが、「毒性ガス」でありかつ「可燃性ガス」であるため及び用途が専門的で少量なために、市民の身近では使用されていません。


3. 防災の要点:

 最大の要点は、人間として備わっている"何かおかしい"、"いつもと違う"、"はじめてのことだ"、"異臭がする"という五感を働かせた「危険予知能力」です。その一助としてご利用下さい。

  @ 燃料の燃焼時には、不完全燃焼をさせないために、必ず「換気」をする。
     ※都市ガス供給業者に、説明パンフレットの配布を要請し、指導を受ける。
     ※燃焼器具メーカーの「取扱説明書」を熟読する。不安なら質問する。

  A 密閉した場所に入るときは、当事者(本人)の責任範囲以外の場所からの流れ込みも有り得るので、「換気」をした後で入る。
     ※密閉状態だと、一度溜まった一酸化炭素は薄まらない。

  B 微量でも常時発生する可能性のある場合には、発生場所近くに「ガス検知・警報器」、「換気扇(装置)」を設置する。
     ※法規等での規制が無くとも、安全保持コストとして自主的に設置する。

舌足らずですが市民の皆様に少しでもお役に立てれば幸いです、「ご安全に」

平成20年2月13日
社団法人 大阪府高圧ガス安全協会
文責 皆川 勇



目次:  第3話 酸素 / 第2話 一酸化炭素 / 第1話 メタンガス
    お問い合わせ先
    一般社団法人 大阪府高圧ガス安全協会
    TEL:06-6229-1236
    FAX:06-6229-3741
    E-mail:info@daiankyo.or.jp