目次: 第3話 酸素 / 第2話 一酸化炭素 / 第1話 メタンガス


市民の皆様へ 〜易しいガスのお話〜 第1話 メタンガス(CH4)



 大都会の温泉汲み上げ施設において、メタンガスによる爆発事故が報じられました。
当協会は「高圧ガスの安全・保安」に係る技術の専門家集団として、製造・販売・輸送・検査等の現場の安全を維持することによって、市民生活に対する影響を無くすべく努力してまいりました。
このたびの事故の教訓の一つとして、なるべく専門用語、数値を使用しないように記述して、一般市民の皆様に理解できる「易しいガスのお話」をホームページ上で順次公開することにしましたので、ご利用下さい。

第一話 メタン(CH4)

1. ガスの性質:

メタンガスは純度の高い場合は無色無臭で、身近に存在するガスです。
しかし、可燃性ガスとしてコンロ等で単に燃えるだけでなく、空気と一定の比率で混合したときに着火すると、激しく爆発します。


2. ガスの在る所:

  @ 都市ガス
 大都市に於ける家庭用ガス(都市ガス)は、中東・東南アジア等で地下より採取した天然ガス(メタンガス)を現地で液化して、液化天然ガスタンカーで運ばれて来たものを、日本の基地で気化させた後に地下埋設管(ガス管)で家庭に供給されています。
 また、都市ガスは洩れた場合に誰にでも感知し易いように臭い成分を添加していて、特有の臭いがします。それでも、室内に必ず「ガス検知警報器」を取り付けます。

  A 炭鉱
 日本においては一世代前になりますが、石炭を掘る「炭鉱」の坑道内においてメタンガスが噴出して爆発事故が多発し、大事故になったことも有りました。
 事故を防ぐために坑道内の各所に「ガス検知警報器」を設置して現場での監視と管制室において集中管理し、かつ強力に「強制排気」していても、密閉された坑道で大量噴出した時には、現在も中国等において炭鉱爆発事故が発生しています。

  B 天然ガス井戸
 日本においては数が少なく新潟県、千葉県等に地域が限定されているが、地下に埋蔵されているメタンを主成分とする天然ガスを汲み上げる井戸があり、それを集めてコンロ等の家庭用燃料に使用しています。以前は化学原料としても使用されていました。
 これら地域では、積極的に利用しないまでも、田圃、河川、地表から少しずつ湧き出ているところがあります。

 今回の温泉汲み上げ施設においては、地中深くの温泉中に溶け込んだりして同伴してくるメタンガスを温泉水と分離する装置があり、その周囲(地下室、又は一階)にメタンガスが滞留していたため、室内の空気と混合して爆発範囲に至っていたものと考えらます。
 なお、爆発範囲の混合気体が生じても着火源となる火気が無いと爆発しませんが、現時点では何が着火源であったかは公表されていません。
  
  C 糞尿発酵槽
 豚等家畜に限らず人間の糞尿を集めて密閉(空気を遮断)して貯留していると、発酵してメタンを主成分とするガスが発生します。
 家畜糞尿処理場、し尿処理場等では発生したガスを集めて、燃料ガスとして使用しています。

 また、汚い池や河川において、ぶくぶくと泡が湧き出てくるのは、これと同じ発酵が水底の汚泥で生じている場合に相当します。これらの(嫌気性)発酵の場合には、メタンの他に臭気のある硫化水素(有毒ガス)が同伴してきます。


3. 防災の要点:

 最大の要点は、人間として備わっている"何かおかしい"、"いつもと違う"、"はじめてのことだ"という「危険予知能力」です。その一助としてご利用下さい。

  @ メタンが存在する又はメタンの発生する可能性があるのかを調べる。
     ※前2項の@〜Cのどれかが付近に有れば、存在の可能性がある。
     ※役所等公的情報、その地域固有の過去情報、ガス関連業者情報等

  A メタンが存在する可能性が有る場合には、密閉せず「換気」を続ける。
     ※密閉状態だと、メタンガスが溜まり続け濃度が上昇し危険度が倍増する。
     ※ガス製造工場は、電気火花の生じない防爆形換気設備を使用しています。

  B 微量でも常時発生する可能性のある場合には、発生場所近くに「ガス検知・警報器」を設置する。
     ※法規等での規制が無くとも、安全保持コストとして自主的に設置する。

舌足らずですが市民の皆様に少しでもお役に立てれば幸いです、「ご安全に」

平成19年7月1日
社団法人 大阪府高圧ガス安全協会
文責 皆川 勇



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